編集後記|『ブレーメンの音楽隊』をよんで——「好きな場面だけ書く」から始める伝え方の練習

感想文の書き方

今回読んだ本はこちら。

小学生の感想文はどこから書かせればいい?まずは「心が動いた場面」だけで十分

小学生の読書感想文でいちばん困るのは「何を書けばいいの?」という最初の一行です。
ここでは、むずかしい言葉や立派な意見よりも「心が動いた場面」を一つだけ選んで、そのときの気持ちを短い言葉で書かせることを起点にしています。これが、家庭でできるいちばん実用的な小学生 感想文 コツだと感じています。

今回読んだお話では、動物たちが人間にこわい思いをさせられたり、いのちの心配をする場面にとても同情していました。ろば、犬、猫、おんどりなど、みんなが「やくにたたない」という理由で追い出されそうになるところを見て、かなしい顔で黙りこんだのが印象的でした。
その同情は、「かわいそう」という短い言葉で言える気持ちなので、まずはそれで十分にします。

もう一つ強かったのは、「どろぼうをおいだすために作戦を立てる場面」が楽しかったことです。「計画して、ちゃんとおいだしたのがすごい」という本人の感想が出ました。
ここには「すごい」「がんばれ」という応援の気持ちが入っています。応援したい気持ちは、その子自身のことばでとても出やすいので、書きやすい素材になります。

本を読みながら「かわいそう」「がんばれ」と感じた瞬間が入口になる

「どの場面がいちばん心にのこった?」ではなく
「だれをいちばん助けたくなった?」
「どきどきしたのはどこ?」
など、気持ちに寄った聞き方をすると、そのまま一文になります。

  • 「○○がかわいそうだった」
  • 「はやくにげてっておもった」
  • 「がんばれっておうえんした」

この“応援したい”という感情は、大人が「感想を考えて」と言っても出てきにくいのですが、読みながら自然に声に出ることがあります。今回も、どろぼうがネコにひっかかれる場面で「おうえんしたいきもちになりました」と書いています。
これはすでに「自分の心が作品の中に入って一緒に動いている」状態です。そこまで出たら、もう感想文としては形になっていると考えていいと思います。

あらすじは書かせない、説明もしぼる

低学年だと、あらすじだけで終わることが多いです。
ただ、あらすじに時間を使うと、肝心の「自分のことば」を書く余力がなくなります。

なので我が家では、
・起こったことの説明は最小限(1〜2行)
・その後に「そのとき私は〜と思いました」を置く
という並びにしています。

これは、先生向けの“正解”ではなく、日々の記録として「何に心が動いたか」を残すための並びです。


今回の読み方と書き方の記録(低学年のリアル)

ここからは、実際の読み方・書き方をそのままメモします。家庭で同じようにやってみたい方の参考になればと思います。

読んでいるときの表情と声に注目しておく

読みながら、すこし眉がさがったり、口もとがゆるんだり、声が小さくなったりします。
それはだいたい「心が動いた場所」です。

今回も、傷ついた動物たちに寄りそいながら読む時間が長くて、悲しそうな表情になっていました。
この「悲しそうだったよ」という観察は、あとで「どこがかわいそうだったの?」と声をかけるきっかけになるので、親のメモとして残しておきます。

「応援したくなった」と書けた日は一歩前に進んだ日

今回の感想文では「ねこにどろぼうが引っかかれたときに、すごくおうえんしたいきもちになりました」と書いています。
これは「私はこう思った」より少し進んだ表現です。

・相手を応援したい
・その場に入りたい
・いっしょに戦いたい

という“自分の心の動き”まで出ているからです。

この段階まで来ると、「感じる力(感情移入)」はもう十分に育っていると見てよさそうです。

パターンをつかんだサインと、そのままにしない理由

いくつか感想文を書いていくと、「かわいそう/すごい/たのしそうだった」という3本柱でまとまる日が増えてきます。今回も全体的にサクサク書いていて、型をおぼえた印象がありました。
この「サクサク」は成長ですが、同時に次の課題でもあります。

なぜなら、型だけで完結してしまうと、そこから先の「考える」「自分の体験とつなげる」まで行かなくなることがあるからです。
習い事でも、同じ型の練習だけでは頭打ちになる瞬間があります。表現も同じだと感じています。


親がそろそろ次のステップに進めたいと思ったタイミング

いまの段階では、「感じたことをそのまま言葉にする」はできています。
次は、少しだけ深掘りを入れてもいい時期だと思いました。

「いつも同じ型で書けるようになった」その先にいるのは”深掘り”

深掘りというのは、むずかしいことを書く、という意味ではありません。
・なんでそう感じたの?
・その気持ちは前にもあった?
という、二つ目の問いを立てることです。


「かわいそうだった」→「なんでかわいそうだった?」
「がんばれって思った」→「どんなふうにがんばってほしかった?」

問いが一つ増えるだけで、文章の厚みが少し変わります。

どこを広げる?「なぜそう思ったのか」

この本では、最後に動物たちが安心して暮らせる場所を見つけて、そこに住む場面があります。
「自分もその中に入りたいぐらい楽しそう」と書きました。
ここで「なんで入りたいと思ったんだろう?」と聞くと、
・安心できる場所がうれしい
・自分の好きなものがそろっている
という本人の価値観が見えてきます。

これはもう、国語というより「自分は安心できる場所をどう感じるか」という話です。
この深掘りは、ただの感想文ではなく、その子の内側を知るメモにもなります。

習い事と同じで、型だけでは伸びにくいと感じていること

スイミングでもピアノでも、ある程度までは「形をそろえる」ことが上達になります。
でも、そこから先は「自分の考えで調整する」ことが必要になります。
感想文も同じで、本人が“考えたこと”を言葉にしていく段階にそろそろ入れるかもしれない、と感じました。


次に読みたい本のメモと、読みつなぎの考え方

次に読みたいと言ったのは『ばんねずみのやかちゃん』でした。
「安心」「なかま」「たよりあう感じ」が続けて描かれる作品を、今はよく手に取っています。これは、いまの心のテーマなのかもしれません。

つぎは『ばんねずみのやかちゃん』を手に取らせたい理由

・キャラクター同士の関係性でお話が進む
・小さな存在が自分のやり方で場を変えていく
・安心していい場所がちゃんとある
このあたりは、今回の本で強く反応していたポイントと近いので、自然につながると思っています。

1冊ごとに「感じる力」を少しだけ揺さぶる選び方メモ

低学年のうちは、「漢字が読めるか」よりも「自分の気持ちと結びつけられるか」を優先して選んでいます。
“好きな世界”が続きすぎても飽きるので、ときどき少しちがう色合いの本を入れて、感じ方の幅を揺らしておく。
それが、国語力のためというより、生きものとしての感受性のストレッチになればいいと思っています。


まとめ:感想文は「正しい答え」より「残したい温度」

感想文は、学校に提出する「文章の課題」であると同時に、家庭に残る「その時期の心のスナップ」でもあります。

・どこで心が動いたか
・だれを応援したくなったか
・どの場所に入りたいと思ったか

それが書けていれば、低学年としては十分に価値があると感じました。
次の段階としては、「なんで?」と一歩だけ深く聞いてみる。
そのくり返しで、ことばは少しずつ太くなっていくのかもしれません。


よくある質問(FAQ)

Q1. あらすじを書かせるのはダメですか?
A1. ダメではありません。ただ、低学年ではあらすじだけで力を使い切ってしまい、肝心の「自分の気持ち」が書けないことが多いです。最初は、あらすじは1〜2行に短くしても大丈夫です。

Q2. 親が質問して引き出すのは“手伝いすぎ”になりますか?
A2. 「なんでそう思ったの?」のような問いかけ自体はサポートだと思っています。実際の文章を親が書いてしまうと別物になりますが、問いを投げてあげることは、会話に近い家庭学習だと考えています。

Q3. 子どもが毎回同じような言い回ししか書きません。直すべきですか?
A3. 同じ型で書けるというのは、一つの安定です。そこから先は「自分の体験と似ているところあった?」「自分だったらどうしたい?」など、いつもより半歩だけ深い問いを置いてみると変化しやすいです。急にむずかしい語彙や正論に進める必要はありません。

Q4. 読む本は、漢字が多くないほうがいいですか?
A4. 漢字量より「気持ちと結びつけやすいか」を優先しています。同じテーマ(安心・仲間・応援したい気持ちなど)で何冊か続けて読むと、その子の中の軸が少しずつ太くなります。本選びは“国語力アップ”というより、“安心して感じきれる場所”を少しずつ広げるイメージに近いです。

Q5. 習い事が多くて本を読む時間が短いです。週末だけでも意味はありますか?
A5. あります。大事なのは量ではなく、「心が動いた場面を1つだけ覚えておくこと」です。送迎のあと、寝る前の5分などで「今日の本、だれをいちばん助けたくなった?」と聞くだけでも、表現力の土台になります。

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