今回読んだ本はこちら。
小学生の読書感想文は「好きな場面」と「そのときの気持ち」だけで始めていい
小学生の読書感想文は、むずかしい分析を書かなくても大丈夫です。
まずは「いちばん心が動いた場面」と「そのときの気持ち」を書くだけで、立派な感想文になります。
よくある型は「はじめ・あらすじ・感想・まとめ」の4つに分ける方法。学校でもこの順番を教わることが多いですが、家庭ではそれほど型にこだわる必要はありません。
最初の一歩として大切なのは、「どこで心が動いたか」をはっきりさせることです。
このページでは、実際の小学3年生が書いた感想文をそのまま参考にしながら
・家では親がどこまで関わる?
・どこで手を引く?
・この積み重ねは何になる?
を整理します。
まず親が知っておきたいこと
文部科学省も「読書は、ことばを学び、感性を磨き、表現力や創造力を高める」としています。
つまり感想文は、テストの点ではなく「自分の気持ちを他の人に伝える力」を育てる時間です。
一方で、読み終わった子どもにいきなり「さあ書こう」は負担になります。
家庭では「ゆっくりでいいよ」という姿勢も、実は大事なサポートになります。
感想文の入り口は3ステップでOK
家庭でできる基本ステップは、この3つだけで十分です。
- 心が動いた場面を1〜2こだけ選ぶ
 - そのときの気持ちを言葉にしてみる
 - なぜそう思ったのか、少しだけ理由を書く
 
この「場面→気持ち→理由」の流れが、感想文の芯になります。
原稿用紙ぜんぶを一気に埋めなくても、まずはここだけ書ければOKとしてあげたいです。
実例:小学3年生が「ずどんといっぱつ」を読んで書いた感想文
今回題材にしたのは『ずどんといっぱつ』。
家では、大人があまり口を出さず、子ども本人にメモのように書いてもらいました。
感想文の冒頭は「なぜこの本をえらんだか」から始まっています。
「絵がむかしのような絵だったので気になったから」という理由は、とてもシンプルですが十分です。
本を手に取ったきっかけを書くことは、はじめの一段落として使いやすい導入です。
どこに心が動いた?=好きな場面メモ
子どもは4つの場面をあげていました。
・すてられてしまうシーン
・つかまって、でもにげるシーン
・ひどいことを言われても走りつづけるシーン
・サーカスで新しい名前をもらうシーン
ここで大事なのは「あらすじ全部」ではなく、「自分が強く覚えている場面だけ」を選んでいること。
このしぼり方は、そのまま感想文の「なか(本文の中心)」になります。
そのときの気持ちをことばにする練習
気持ちの書き方で印象的だったのは、こういう言い回しです。
シンプがごみすてばにすてられてかわいそうでした。
おじさん、なんでそんなことするのというきもちになりました。
これは、ただ「かわいそう」だけで終わらず、「なんでそんなことするの?」と他の登場人物に問いかけています。
ここまで書けると、読み手(先生や親)にも気持ちが伝わります。
国語では「出来事」と「自分の気持ち」を結びつけることが大切だとされています。
「くじけない」が言葉になった瞬間
いちばん成長を感じたのは、次の一文でした。
シンプがひどいことをいわれてもはしり、くじけないでそれがすごいです。
どうしてかというと、そうやってくじけないで食べものくれる人いないかなとさがせる犬はあまりいないと思うからです。
ここには2つの力があります。
・『くじけない』という評価のことば
・『なぜそう思ったのか』という説明のことば
これはまさに、国語で求められる「自分の感じたことを、理由といっしょに人に伝える力」です。
大人が書き直さずに、本人の語彙のまま残しておきたい場所だと思いました。
親のかかわり方:どこまで手伝う?どこで離れる?
家でのサポートは「引き出す」「整える」「書きすぎない」の3つに分けて考えると落ち着きます。
その日ぜんぶ書かせなくていい理由(長期戦でいい)
今回、この本は親が「読んでみない?」とすすめて、子どもはそれほど乗り気ではありませんでした。
それでも、少しずつ読み進め、なんとか感想文の形になりました。
家庭では「今日は好きな場面だけメモしよう」で終わっていい日があっていいと思います。
読書感想文を短期の勝負にすると、読書自体がイヤな記憶になることがあります。
長い目で見るなら、「読んで、すこしは考えてみた」という経験そのものが残れば十分だと感じています。
声かけ例:「なんでそう思ったの?」は質問しすぎ?
「なんでそう思ったの?」は便利な問いですが、何度もくり返すとテストみたいになります。
おすすめは言いかえです。
- 「どこがいちばん気になった?」
 - 「そのとき、きぶんはどんな感じ?」
 - 「つぎはどうなると思った?」
 
この3つは、子どもの心の動き(びっくり・かなしい・うれしい・ハラハラ)を思い出させる声かけなので、答えやすいです。
子どもがしんどくなる一歩手前で止める目安
ため息が増えたら、今日は終わりでいい合図だと思います。
「つづきは明日ね」でやめることは、さぼりではなく、次の日の呼吸を残すこと。
親が「ここまで書けたよ。のこりは明日にしようか」と区切ってあげると、書くことへのハードルが下がり、結果的に続きやすいです。
それでも育っていくもの:国語力・表現力・自己肯定感
「気持ちを説明しようとする力」はゆっくり積み上がる
今回の感想文では、文法的にゆれがあっても、そのまま残しました。
子どもが「自分の言葉で書けた」と感じることは、自己肯定感にもつながります。
親が清書しすぎると、整った文章にはなるけれど、「自分で書けた」という感覚は残りにくいものです。
読書はことばのストックになる
国としても、子どもの読書習慣は「言葉を学び、感性を磨き、表現力や創造力を豊かにする力」になると位置づけています。
感想文は、その読書のあとに「私はこう思ったよ」と外に出してみる練習の場と考えると気が楽になります。
習い事と同じで「続けていること自体」を記録しておく
スイミングやピアノのように、読書も「やった回数」があとから効いてくるものかもしれません。
たとえ劇的な伸びが見えない時期でも、ゆっくり積み上がっていると信じたくなります。
次に読みたい本のメモ
今回の流れで選んだ次の1冊
このあと読みたいと話していたのは「森の本屋さん」。
自分と本との距離が近くなるような、やわらかいお話です。
ここに「今はこれを読んでみたい」というメモを置いておくと、次に図書館へ行くときの目印になります。
「森の本屋さん」を候補にした理由
・「読んでみない?」と声をかけた大人の本ではなく、自分のほうから興味を示した本だから
・本が好きなキャラクターが出てくるお話は、気持ちを重ねやすいから
次の一冊を自分で選ぶ感覚は、読書を「やらされるもの」から「自分の時間」にしていくきっかけになると思います。
まとめ:家庭での感想文は「観察の記録」でいい
親にとってのゴール
親のゴールは「すぐに上手な文章を書かせる」ではなく、「本を読みきって、気持ちをひとことでも外に出すところまで並走する」くらいでいいのだと思います。
・どの場面が心にひっかかった?
・そのときどんな気持ちになった?
・どうしてそう思った?
この3つを、その子自身のことばで書けたら、いったん十分。
子どもにとってのゴール
子どもにとっては、「私の感じたことは、言葉にしていいんだ」と思えること。
その実感こそが、のちの国語力や自己表現の土台になっていくと考えています。
FAQ
Q1. 感想文なのに「あらすじ」をどこまで書けばいいですか?
あらすじは長くなくて大丈夫です。最初に「なぜこの本をえらんだか」を一文で書き、次に心が動いた場面を1〜2こだけ選んで説明すれば十分です。
Q2. 親が口を出しすぎるのはよくないですか?
語彙を貸すことや、文章を区切ること自体はサポートの一部です。ただし、子どもの言い回しを大人っぽく直しすぎると「自分で書けた感」が消えてしまうので、清書しすぎないことも大切です。
Q3. 1日で終わらないのはNGですか?
問題ありません。むしろ、負担が強すぎると「本を読むのがいや」という記憶になることがあります。少しずつ書けたら、その日は区切ってよいと思います。
Q4. これって国語力アップになるんでしょうか?
読書は「言葉を学び、感性や表現力、創造力を育てる」とされています。自分の気持ちを理由とセットで書く練習は、その力を積み上げている途中だと考えられます。
Q5. 次の本選びはどう決めればいい?
親がすすめた本だけでなく、子ども本人が「これ読みたい」と言ったタイトルを優先すると、次の読書へのハードルが下がります。「森の本屋さん」のように、本がテーマのお話は入りやすい例です。
  
  
  
  

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