編集後記|「ばんねずみのヤカちゃん」で見えた“自分のことば”の育て方

感想文の書き方

今回読んだ本はこちら。

小学生の感想文は「うまく書けたか」より「どこが心に残ったか」を言葉にする練習

必要なのは、きれいな文章を一気に書かせるテクニックではありません。
家でできるいちばんのコツは、子どもが「ここが気になった」「こう思った」と感じたところを、そのまま残してあげることだと考えています。

読書感想文は、国語力そのものというより

・心が動いた場面を覚えておく力
・そのときの気持ちをことばにする力

の練習だと考えています。

感想文を「提出物」ではなく「日記のような記録」として扱うと、親のほうも少し気持ちが軽くなるかもしれません。

我が家で実際にやったサポートは3つだけ

感想文を書く前に、特別なワークやドリルは使っていません。
やったのは次の3つだけです。

  • 本人に本を選ばせる
  • 読みながら付箋を貼る
  • 好きな場面に「ひとこと手紙」を書いてみる

どれも机よりリビングでできることです。
ピアノやスケートなど習い事の前のすき間時間でも続けやすい方法でした。

① 本を選ばせる:「絵が気になったから」で十分

今回読んだのは『番ねずみのヤカちゃん』(福音館書店)。
ねずみの家族と人間の家に住みつく小さな世界の物語で、ヤカちゃんはこわいものにもはっきり立ち向かうタイプの子です。

この本を選んだ理由は「絵が気になったから、見てみたいと思った」。それで十分です。
「なぜその本にしたの?」と聞かれて、子どもが最初に出した言葉は、立派な一文になります。
親の役目は「それいいね、書いておこうか?」とメモしてあげるくらいで十分です。

② 読みながら付箋を貼る:気になったシーンごとに小さくメモする

読み終わってから全部思い出すのは、小学3年生には負荷が大きいです。
そこで、読みながら付箋(ポストイット)を貼っていきました。

  • ねずみたちがお母さんねずみに見つかったら大変だと話す場面
  • ヤカちゃんが「ねこってこわいんだよ」とおどろいた場面
  • ドドさんたちがねこを連れてきて「ねこだねこだ」とさけんだ場面
  • どろぼうが入ってきて「ものをとっていいはずない」と気づいた場面
  • どろぼうを追い出して、チーズを毎日もらえるようになった場面
  • 「大きな声がしたら大事にしてあげてね」と言われるラストの場面

この6つを、子どもは早い段階で自分からピックアップしていました。
読みながら付箋を貼るという方法は、心に残った場面を可視化しておく練習にもなります。

「このシーンはなんで覚えておきたいと思ったの?」と聞くと、子どもは短い言葉で理由を返してくれます。
その短い言葉が、感想文の芯になります。

③ 好きな場面にひとこと手紙を書く:「がんばってね」など感情の言葉を大事にする

付箋で拾った場面ごとに、主人公に向けて手紙みたいに書いてみました。

  • 「ものをとっていいはずないときずいてすごい」
  • 「らくちんであんぜんでよかったね」
  • 「チーズをあげたいです」
  • 「ばんねずみとしてがんばってね」

どれも短い文章ですが、登場人物の行動をどう感じたか、自分ならどうしたいかが入っています。
子ども本人の言葉のまま残すことが、表現力の土台になります。

「ばんねずみのヤカちゃん」を読んだときの記録

絵本と物語のあいだくらいの作品で、ことば遣いは少し古いところもあります。
声に出して読むとリズムが気持ちいいタイプのお話でした。

読んでいたときの様子:声に出しながら、付箋を自分で貼っていった

親の私も初めて読む話でしたが、今回は自分から読みたい気持ちがはっきり出ていました。
表紙を見て「これにする」と決め、読みながら「ここ気になる」と言い付箋をどんどん貼っていきました。
宿題というより、リビングで楽しみながら進めていた印象です。

印象に残った言葉:「きずいてすごい」「らくちんであんぜん」など、具体的な気持ちが出てきた瞬間

書き残した言葉の中に、成長を感じました。

「きずいてすごい」
「らくちんであんぜんでよかったね」
「チーズをあげたいです」
「ばんねずみとしてがんばってね」

これらは「おもしろかった」より一歩進んでいて、
登場人物の考えを評価したり、自分の価値観をのせたりしています。
その一歩が、表現力の芽だと思います。

親として見えた成長:「ものをとっていいはずない」と考えられるようになっていたこと

ヤカちゃんがどろぼうに向かって「ものをとっていいはずない」と気づく場面に強く反応していました。
「まだあんまりしらないのに、ものをとったらだめってしってるからすごい」と書いていました。
自分の外にある価値観に気づいて、それをことばにする。
書く力のなかで、もっとも大切な段階だと思います。

次に読みたい本リスト:「ずどんといっぱつ」など次の一冊を決めておく

読み終わったあと、「つぎは『ずどんといっぱつ』がよみたい」と言っていました。
次の本をすぐ決めることで、読書習慣が途切れません。
「また読もうね」で終わらせない一言メモが、次の読書の入口になります。

感想文づくりのよくあるつまずきと、親がやりすぎない工夫

「あらすじばかり書いてしまう」問題はどう考える?

小学生の読書感想文は「本を選んだ理由→あらすじ→心に残った場面→まとめ」で書くと整理しやすいですが、
子どもは安心のために、あらすじを長く書きがちです。

そのとき「説明ばかりだよ」と止めるより、「一番ドキッとしたのはどこ?」と聞くと自然に感想へ進めます。

「もっとちゃんと言いなさい」と言いたくなったら深呼吸したい理由

「もっとちゃんと書いて」は、子どもにとって正解のない問いです。
かわりに「そのとき、どんな気持ちだった?」と聞くと、短いけれど芯のある言葉が出てきます。
たとえば「らくちんであんぜんでよかったね」。
この一文だけで、安心した気持ちや安全を大事にする心が伝わります。

古い言い回し・むずかしい語が出てきたとき、言い換えすぎない

『番ねずみのヤカちゃん』には、少し古い訳語があります。
それでも、子どもは文脈から自然に理解していきました。
すぐに全部を現代語に置き換えなくても大丈夫。
むずかしい単語だけそっと補えば、読みのリズムが切れません。

まとめ|感想文は成績ではなく「ものの見方の記録」だと思うとラクになります

読書感想文は「自分の感じ方を残すノート」です。
どの場面で立ち止まったか、何を思ったか、主人公に何を伝えたかったか。
この3つが書けていれば、十分に「書く力」が育っています。

親としては、正しさよりも「今日はここまで言葉にできたんだね」と、
積み重ねを見守る姿勢でいたいなと思います。

よくある質問(FAQ)

Q1. あらすじをどこまで書けばいいですか?
A1. はじめ・中ごろ・おわりで「何が起きたか」を一文ずつ書ければ十分です。
説明よりも「この場面ですごいと思った」と気持ちを書くほうが伝わります。

Q2. 子どもが「おもしろかった」しか言いません。どう広げればいいですか?
A2. 「どこが特に?」と場所をしぼって聞くと、「こわかったと思う」「ほっとしたと思う」など一歩深い言葉が出やすくなります。

Q3. 親が手を入れすぎるのはよくないですか?
A3. 下書きメモまでは親が書き留めてもOKです。
大切なのは、子ども自身の言葉を大人の表現に置き換えないことです。

Q4. 本は親が選んだほうがいい?それとも子どもに選ばせたほうがいい?
A4. 子どもが手に取ったものを優先して大丈夫です。
絵やタイトルが気になった本は、最後まで読み切りやすく感想も出やすいです。

Q5. 昔のことばづかいが多い本でも大丈夫?
A5. 少し古い言い回しの本でも、音読しながら進めると子どもは文脈から意味をつかみます。
むずかしい言葉だけ補えばリズムを崩さず読めます。

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